なだねこ

なだねこが泣いた

ねこは、どんなときも笑っていました。

最愛のおばあさんが亡くなった時も……

ただ、笑い続けました。

おばあさんが神様のもとに召された後も、ねこは一匹で思い出の家に住み続けました。おばあさんの記憶が、ねこをいつもあたたかい母ねこのぬくもりのように包んでくれたのです。ねこは、おばあさんが着ていた着物の上にくるまって眠るのが大好きでした。おばあさんのやさしい香りの中で、ねこはごろごろとのどを鳴らしては、あしでやさしくその布地に触れては、おばあさんの存在を確かめるのでした。

村はどんどんさびれていきました。

でも、ねこは笑い続けました。

そして、村に誰も住む人がいなくなり、この廃村を訪れる人もまったく途絶えてしまったとき……

ねこはおばあさんと母ねこのお墓の前に歩いていきました。そして、簡素な木の十字架にからだをこすりつけてから、ねこは初めて泣きました。

かなしみが、おなかのなかからはじけるように泣きました。

透明で、うつくしい月のしずくのような宝石が、いくつもいくつもこぼれおちました。

一週間と二日泣き続けて、ねこは横たわったまま動かなくなりました。

見る影もなくやせ細ったねこを、やさしいひかりを放つたくさんの涙石が包み込んで、やがてひとつの結晶になりました。

そこには、大好きなおばあさんと母ねこ、そしてあの子ねこが抱き合う姿が、浮き彫りになっておりました。

涙石の結晶は、雨が降っても、雪が降っても、いつまでもいつまでも、悠久の時が過ぎるまで、やさしい輝きを失うことはありませんでした。 (了)

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