晴れのち曇り ときどき溺愛

晴天の霹靂

 後悔というのはどうして後からついていうるものだろうと財布を開ける度に思う。

 琉生と居酒屋に行ってから三カ月が過ぎていた。渡された名刺は捨てられないままお財布の中にある。連絡はしてないしするつもりもない。でも、捨てられなかった。

 
 お互いにお見合いの代理だったということが分かってから溜め息の数は減ったけど気持ちは簡単に揺れるようになってしまった。早く忘れてしまえればと思うけど名刺を捨てられない私はいつまで経っても立ち止まっている。いつまで私はここにいるのだろうかと自問しても答えは出ない。このまま時間が解決してくれるしかないと今では思っている。

 そして、今日も朝はやってきて、私はいつものように出社していた。


 会社の入っているビルの自動扉を抜けたところまでは何も変わらない朝だった。しかし、オフィスの入っている階にエレベーターが着き、ドアが開いた目の前に広がるのは雑然とした光景でいつもとは全く違う。何かあったのだと一発で分かるくらいに慌ただしく人が動きまわっているし、その表情は険しい。


 穏やかに挨拶を交わしあう雰囲気は全くなく、必死で動き回る人ばかりだった。そんな中、営業室から出てきた琉生がスッと私の前を横切っていった。いつもならニッコリと笑って挨拶をするのに、私の姿さえ映ってないようだった。
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