公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
契約。胸に咲いた赤いバラ

◇◇◇

灯台でのキスから三カ月ほどが経っていた。

夏は過ぎて秋も深まり、王都の町屋敷には、国内の各領地から貴族たちがぞくぞくとやって来ているそうだ。

収穫祭を終えた後は王都で春まで過ごし、貴族間の交流を深めるものらしい。

ジェイル様も議会という名の男性貴族の親睦会や、あちこちの屋敷に招待されて、連日忙しそうだった。


私はというと、変わらず勉強に勤しむ毎日。

書庫にこもっての学問だけではなく、ときにはレース編みをやらされ、ときには楽士を招いて舞踏会用の曲や流行りの曲を聴かされて、音楽についても知識を叩き込まれた。

ダンスも、カドリールやワルツ、ポルカ等の数種類をジェイル様や、彼が多忙のときにはオズワルドさんに教え込まれ、今の私は一端の貴族令嬢のように振舞うことができるようになっていた。


秋の夜空に大きな月が昇る頃、私はジェイル様と晩餐の席についている。

一階の北東に位置する食堂は、ワインレッドの絨毯敷きの豪華な広間。

浮き彫り加工の施された壁や精緻な彫刻の施された柱に、豪華なシャンデリアや壁のスコンスが室内を明るく照らしていた。

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