ドキッ!? 気になる彼と禁断×××生活!【強制完結】
さよならは心の中。
「やってしまった・・・」
放課後の教室。
私は、これでもかってくらい落ち込んでいた。
「まぁまぁまぁ、あおちゃん。 栄光は進んだ先にしかないよ」
「檸檬ちゃん。 耳障りのいい格言風の言葉はこんなとき、何の役にも立たないんだよ・・・」
「あお。 そんなこともあろうかと、丈斗王子の秘蔵写真を準備しておいたぞ?」
なんと!
傷心中の私だが、さすがに反応してしまう。
どれどれ。
「なかなか、いいショットでしょ?」
確かに、いい写真だ。
二人が、いい感じに腕まくらしながら、見つめ合ってーーー!?
さっきのシーンだ!
いつ、どこから撮ってんだこれ!?
「最新のドローンは羽の音がしないからいいよね」
「盗撮じゃん!!」
「だからこそ、これほど自然な表情を撮ることができるのだよ」
うわ、やば。 犯罪者の理論だ。
「ほほぅ。腕まくらするには、まだ関係が成熟していない二人の、とまどいや恥じらいから、つい二人の今後に想いを馳せてしまう、青々しさ満点のいい写真ですなぁ」
「はっ、あなたはまさか。 人物写真を撮らせたら右に出る者はいない、写真会の重鎮。 ドン・レモンさんですよね!」
「いかにも、私が、ドン・レモンだ」
おうおう、なにやら小芝居が始まった。
「いいかね? シャッターチャンスとは、その瞬間を永遠に残したいという心だ。 つまり、写真家とはシャッターを押しながら、さよならと心の中でつぶやく、そういう人種のことだ」
うわ、タイトルをすでに使ってきた。
シリアス系の雰囲気なのに、これでもかってギャグを入れるからな。
あと、こういうメタ発言も、嫌いな人は嫌いなんだよな。
まだ、コントは続いているようだけど、私は、何度目かになる、ため息をついた。
禁断×××生活の答えが分かった。
私は、さっき丈斗くんに、嘘をついてしまった。
聞かれてもない吐血の理由を、とっさに言い訳として嘘をついた。
自分は病気なのだ、と。
だから、タイトルは、禁断、嘘闘病生活。
私は、これから、丈斗くんに、嘘をつき続けながら、それでも、彼との関係を続けていかなければならない。
丈斗くんの善意につけこんで、彼をだまし続けるのだ。
誰が、こんな恋物語に共感できるだろうか。
自分勝手な嘘で、彼を振り回すヒロインに誰が共感するだろうか。
そんなストーリー、私は認めない。
私は、丈斗くんを諦めるべきなのだ。
とっさに、相手のことではなく自分のために嘘をついた時点で、丈斗くんの彼女になる資格がないのだ。
こんな嘘つきより、ふさわしい相手が丈斗くんには、きっといるのだ。
彼には幸せになってほしい。
そう思うからこそ、私は、候補からはずれるべきなのだ。
考え過ぎなのかも知れない。
でも、他でもない丈斗くんのことだ。
考えて、考え過ぎということはない。
私のために嘘をついた私は、
彼のために自分の気持ちを諦める。
当たり前の罰、そして相応な報いだ。
彼より自分を優先した私は、
この先も、何だかんだと理由をつけて、自分を優先する。
そんな、付き合い方もありなのかもしれないけど、私が嫌なんだ。
私は、上辺だけで、わいわい言っていただけの、恋に恋をしていた存在だったのだ。
私は、目を閉じる。
目頭が熱い。
涙が溢れだしそうだ。
でも、涙を流す資格も、きっとない。
こんな涙、流す価値もない。
いまだに紅音と檸檬は、騒いでいる。
きっと、あれは彼女らなりに励ましてくれているんだ。
少し伝わりにくいけど、私の失恋を笑い話にできるように、必死に騒いでくれている。
我ながら、もったいない程のいい友達をもったものだ。
今はまだ無理だけど、
いつか、きっと、恩返しをする。
だから、さようなら、丈斗くん。
私は心の中で、別れを告げた。