海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

雨の日の二人

相葉先生のアパートに向かってトコトコ歩いていると、ポツリポツリと雨が降ってきた。


「え…っ。」


私は立ち止まって空を見上げ、ポツポツと落ちる雨の粒を掌で受け止めてみると、幸いな事に雨脚は弱く感じた。


この日の朝の天気予報では降水確率が0%だった事もあり、当然、傘は持っていなかった私は、とにかく相葉先生のアパートに向かって歩く事にした。


私が住む町は田舎だったから近くにはコンビニなんか無くて、とりあえず雨宿りが出来そうな場所まで歩くしかなかったし、

中途半端な所で帰る方向を変えるのは、余計に遠回りになると思ったからだ。


私はいつもより少しだけ早足で歩き続けた。


最初は弱かった雨はやがて強くなり、相葉先生のアパートの近くに着いた頃には全身ビショビショになっていた。


『参ったなぁ…。』

雨にあたったせいで体が冷えてきた頃、電話ボックスが見つけた。


今でこそ少なくなったけれど、この頃はまだ町の所々に設置されていて、私が見つけた電話ボックスは相葉先生のアパート近くにある公園の側にあった。


急いで電話ボックスの中に入ると、そこから相葉先生のアパートが見えた。


『ここで雨宿りしよう。』


電話の下にある台の部分にかばんを置くと、私はハンカチを取り出して濡れた髪や顔、制服を拭いた。


拭きながら肩越しに相葉先生の部屋を見てみると、リビングらしき部屋に灯る電気の光が見える。


駐車場には相葉先生の車が停められていて、大崎先生の車は見当たらない。


相葉先生が一人だという事に、ホッとしていた。


私は数枚の小銭を電話に投入すると、母にお迎えを頼む前に相葉先生にかけてみる事にした。


もう一度だけ、先生の声が聞きたかったんだ―…
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