海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

止まった時間

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―――――…

4月に入り、私の仕事も始まった。


同じ部署には私の他に2人の女性社員がいて、


私はその内1人の退職による補充の為の採用だと、以前聞いた。



4月いっぱいで退職していく社員さんから仕事の引き継ぎを受けたけれど、


その中には社内で私しか知らない状況になるような重要な業務も多くて、覚える為に必死に過ごした1ヶ月だった。


そんな風に過ごす1日は本当に早くて、緊張の連続だった。



“仕事を頑張る”


それは、採用の報告を受けた時から決めていた事。


そんなのは当たり前の事だけど、その当たり前な事を強く思えたのは、


頑張っていれば、いつか良い話が相葉先生に伝わるかもしれないと信じていたからだろう。


例えそれが大崎先生経由だったとしても、それでもいいと思っていた。


卒業後、しっかり前を向いて生きている私の姿を、ほんの少しでも知ってもらいたかったんだ。




もちろん、青山先生にも会っていた。


私は初めて青山先生とドライブをした日から、週に1、2回のペースで二人で会うようになっていた。


最初の頃よりも仲良くなり、色んな話をして色んな所に行ったけれど、


まだ、恋人と呼べる関係ではなかった。



私は相葉先生を想わない日はなかったけれど、


それでも、


『青山先生の事が好きだ。』


と、思っていた。



私と相葉先生の時間は、あの卒業式の日から止まったままだ。


あれっきり、会う事も話す事も無かったし、


相葉先生がどうしているのか、大崎先生との事も含めて私は何も知らなかった。


人づてに聞く事も無かった。



止まった時間は、


『青山先生と進めていく為に止まっているんだ。』


と、思っていた。
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