海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

そして私達は…

「本日から3ヶ月間、どうぞ宜しくお願いします。」


私は朝から何人もの先生方に、この挨拶をした。


母校への出向初日。


つい先程は全校集会の壇上で、過去最高人数の人を前に挨拶をし、緊張は最高潮に達した。


正直、朝から精神的にグッタリ…っていう感じだった。


そしてこの日、私が在学中の頃にいた先生方が半分位にまで減っている事を知った。


今でもいらっしゃる先生方の中には、在学中に親しく話した事のある先生もいれば、殆ど関わる事が無かった先生もいる。


どちらかというと、関わる事が少なかった先生の方が多いような気がした。



一通り挨拶を済ませた私は、職員室内に用意された席に座り、お借りした教科書をめくり始めた。

そして、自分が担当する単限と授業内容を一つ一つ確認していると、


「朝から疲れただろ?」


その言葉は私に向けて掛けられた気がして、席に座ったまま、声がした方向である左上を見上げると、ニコニコしながら私を見下ろす相葉先生が立っていた。


私と相葉先生は同じパソコンの授業を受け持つのだけれど、担任をしている相葉先生とは席の島が違った。


その為、職員室内での相葉先生は遠く離れていて、私の席から見える先生は常に後ろ姿だった。


相葉先生との席が離れている事にガッカリしたり、安心したり…


たったそれだけの些細な事で、私の心は複雑に変化していくのだった。



そんな相葉先生が、わざわざ私の席の方に来て話しかけてくれたのだ。


優しい笑顔で、コソコソッと小声で言った相葉先生の言葉に、

「ふふっ、ちょっと…。」

と、同じように私も、笑いながら小声で返した。


「俺も最初はそんな感じだったよ。でもきっとすぐに慣れるだろうから、頑張れ。」


「ありがとうございます、頑張ります。」


「授業の事とか、何かあったらいつでも相談していいから。」


「分かりました。その時は宜しくお願いします。」


私が軽く頭を下げると、相葉先生はニコニコしたまま自分の席へと戻っていった。
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