独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
3章、


発注書を胸元に抱え、スタッフルームに向かって店内を進んでいたけれど、ふっとあることに気が付き、私は窓際へと進路を変えた。

歩道を行く人々の手には色とりどりの傘。朝から暗く広がっていた曇り空から、とうとう雨が降りはじめたようだった。

天気が悪いせいもあるだろうけれど、昼を過ぎたこの時間、いつもと比べて客の入りが少ない。

まったりとしてしまっている店内を振り返り見てから、今度こそスタッフルームに戻るべく歩き出せば、通路沿いのテーブルを拭いていたアルバイトの女の子と目が合った。


「暇になっちゃいましたね」


「うん」と微笑み返しつつ、私は彼女が自分に向ける視線が気になり、すぐそばで足を止める。


「どうかした?」


問いかけると彼女はハッとしたように目を大きくさせ、苦笑いを浮かべた。


「いえや、なんていうか……西沖さんって前から綺麗でしたけど、ここ最近、さらに魅力が増してるっていうか、色っぽくなったっていうか……やっぱり彼氏できました?」


ずばり言われ、思わず私は息をのむ。

彼氏という言葉で思い出してしまったのは、もちろん遼のことだ。

けれど、彼のことを“彼氏”というくくりに入れてしまって良いのか判断がつかず、私はくちごもった。



私のお見合い騒動があってから、二週間が経った。


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