二人の科学者の物語
タイトル未編集

私はその時、とても小さな家に住んでいた。壁全面が横に整列されたレンガで味はあったけれど、とにかくとても狭い家だった。
私はとくに何もする事が無い日にそのレンガを触った。本当にただなんとなく。するとレンガは一切音をたてる事なく動き始めた。とても速く。まるで暗号を解読しているかのようなレンガの動き方はとても興味をそそった。レンガは形を変えて一つの部屋を登場させる。ワープロをうつ音がする。クーラーの動く音も。小さな部屋の大きさもレンガ造りの壁も変わらない。だが出てきた部屋には誰かがいる。私はワープロをうつ人に話しかける。
「あなたは誰?」
「君はここに住んでる。レンガが横に並んでいる壁の部屋に。私は誰にも見つからない所に住んでる。それだけの事だよ。君の家からは見る事も音が聞こえる事もない。問題無いだろ?」
私は黙っていた。
彼は続けた。
「戦争だよ。そんな頃からここにいる」
私は何を書いているのか尋ねた。
彼はこう言った。
「物語だよ」
そして彼は自分の後ろにある壁に触る。故意に。すると家の中が草原に変わった。そしてまるで魔法のように男の人がどこからともなく現れこう言う。
「戦争は終わった。」それだけ言うとその人は魔法のようにその場で消えた。
「これが君が僕の事を見つけてから書いた物語。どお?」
「どおって、短かったです」
「君さ、いきなりきたんだからそら短いよ」
「一体どうなっているんですか?この部屋中紙だらけですね」
「この部屋にある紙が地球の歴史を作ってるんだよ。ここにある紙の上に文字を書けばその通りになる」
彼は少し間を空けて窓の外を見る。窓の外には森と家と青空が見える。
「この窓からは世界は見えない。けれども世界は必ず毎日進歩している。僕はこれまでに数々の歴史を作ってきた。もちろん、全てではない。自然の成り行きに任せた事も沢山ある」
「今まででした一番大きな歴史作りは?」
「もちろん。歩いて別惑星までいけるように人間の身体を改造した事だよ」
男は続けた。
「君だって、別惑星に行くだろ?」
「別惑星の人と付き合ってます。私の歴史もあなたが?」
「いや、僕は地球の歴史しか書かないよ」
「昔の人間の身体はもっともっと弱かったんだよ」男は言った。
「へー。見た感じ何も変わらないのにな」私は頭の中でそう思った。
「あの、次の地球の歴史を私に書かせてはもらえないでしょうか?」
「何が書きたい?」男は急にカッコよくなったかのように言った。
「うーん」私は考える。
五分が経った時、男はしびれをきらせて私の目を見て言った。
「やめとこう」

「へー。見た感じ何も変わらないのにな」私は頭の中でそう思った。
「あの、次の地球の歴史を私に書かせてはもらえないでしょうか?」
「何が書きたい?」男は急にカッコよくなったかのように言った。
「うーん」私は考える。
五分が経った時、男はしびれをきらせて私の目を見て言った。
「やめとこう」
私は二歩歩いて書斎の中に積んである一枚の紙に触った。すると真っ白だった紙が突然ものすごく黄ばんだ。埃もついていた。
男はそれを見て唖然とした。
「君は、どの時代からここに来た?」
「今は3050年だけど」
男はとても早口で話し始めた。
「それは予想外。僕が人間の身体を宇宙に行けるように改造したのは2500年だから君は僕と同じ時代の人ではない。なぜだ?」
「私は惑星で初めてタイムマシンをつくった人」
男の口は開いたままふさがらなかった。
「タイムマシンだけは永遠にできないはずじゃ。この紙はタイムマシンだけは許さなかったんだよ。紙はタイムマシンを認めたのか?」
私は一歩彼に近づいた。彼は震えながらこう言う。
「君が僕に触ると僕は間違いなくガイコツになって死ぬ」
私は言う。
「紙は最後までタイムマシンを認めなかった。私が量子力学の概念からタイムマシンを作ったんです。つまり頭脳を使って」
「君は普通の住人じゃなかった」
私はかれの次の言葉を遮るように言う。
「どうしてもお会いしたかったんですよね。素晴らしい発明をするあなたに」
私は続ける。
「タイムマシンはまだ世間に発表されていません。もし発表したらあなたを触る人が必ず現れる。それは怖い事ですからね」
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