「稀華……お前さ」

「……うん。なに?」


熱に浮かされたままのぼんやりした顔のまま、ゆっくり聞き返す。すると少し考える素振りをしてから蓮人が言った。


「クリスマス、何が欲しい?」

「え……?」


突然飛び出した“クリスマス”というワードに思考がついて行かず、きょとんと目を瞬かせる。


「いや、ほら、前に……。あの男と、ちゃんとクリスマスらしいことしたかったのに、その気持ちを踏みにじられたようなこと言ってたろ? だから、俺がそれを叶えてやるよ。お前の過ごしたい“理想のクリスマス”に全力で付き合う」

「蓮人……」


そんなことまで、覚えていてくれていたんだ。それに、クリスマスを蓮人と一緒に過ごしたいって、昨夜ふたりで外を歩いているときに思ったばかり。

蓮人の優しさが胸に沁みるのと同時に、改めて“この人が好きだ”――って、自覚させられてしまう。報われることのない想いが、破裂しそうに膨らんでしまう。


「……ありがとう。じゃあ、少し。ううん、少しじゃないかもしれないけど、わがまま言ってもいい?」

「ああ。行きたいところも、食べたいものも、プレゼントも、お前の望みを叶える。遠慮しなくていいからな」


蓮人はそう言ってくれるけど、行きたいところも食べたいものもプレゼントもさして重要じゃない。

私の、理想のクリスマス……。それは、あなたが一緒にいてくれるだけで叶うから。

けれど、今の関係のままじゃ意味がない。“ペットと飼い主”じゃ、意味がないの。

私は蓮人の腕の中で体の向きを変え、まっすぐに彼を見つめる。そしてすう、と息を吸い、勇気を出して告げた。


「その日、一日だけでいい。……恋人に、なってくれない?」