溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「いや、メシじゃなくて……」
言いにくそうに口ごもる理一に、首を傾げる。
彼はちらっと私の様子を窺うような視線を向け、それから壁に立てかけてあるギターを見ながら話し出す。
「こないだ、ライブハウスで知り合った人がさ。俺がずっと欲しかったアンティークのエフェクター、譲ってくれるって言うんだ」
「エフェクター……?」
いちおうギタリストの彼女だから、その機材の名前は聞いたことがある。
ギターの音色をさまざまに変えられ、演奏に個性が出せるのだと、昔理一に教えてもらった。
とはいえ、なんで今その話が出てくるの?
「でも俺以外にも欲しがってる人がいて、先に金を用意できた方に譲るって条件出されてるんだ。……それで、どーしても俺、そのエフェクターが欲しいから、今すぐ金が必要で」
後半はごにょごにょと聞き取りづらかったけれど、理一の言わんとすることを察した私は、がくっと体の力が抜けた。
自分の欲しいエフェクターを譲ってもらうのに必要なお金が手元になく、他の人の手に渡ってしまいそう=死にそう、めまいがしてきた。ってことなのね、きっと。
拍子抜けもいいとこだけど、理一にとっては死活問題なのか……。