溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「お前をこの手で幸せにする」


深夜の羽田空港。その国際線ロビーの一角で、蓮人が私をまっすぐに見つめて、両手を広げている。

そこに飛び込んでいいってことだよね……? 私の気持ち、届いたってことだよね……?

そんな心の声に応えるように、蓮人はとても穏やかな声で、「おいで」と言った。

わずかに残っていた迷いを断ち切り、私は彼の胸に飛び込むために駆け出した。

その一瞬の間で頭の中によみがえるのは、ついさっきまで一緒にいて、私の背中を押してくれた、彼の友人たちのこと――。



 * * *



ホテルから蓮人に会いに戻ってきたはずのマンション。

そこで、初めて聞かされたのは、蓮人が海外出張に出かけてしまったという事実だった。

それを受け入れることができずにマンションのエントランスで打ちひしがれていた私を正気に戻したのは、一匹の犬の鳴き声だった。


「ワン!」


冷たい大理石の床にペタンと座っていた私の耳に、そんな泣き声が聞こえたのと同時に、目の前に黒くてもっさりしたくるくるの毛皮が現れて、つぶらな瞳でじーっと見てきた。

なに!? なんでいきなり犬が現れるの!? 

身を引いて観察する限り、どうやら犬種はトイプードルみたいだ。クリスマスだからか、サンタのコスプレと思われる赤と白の服を着せられている。

うーん、可愛いのは間違いないけど……一体なんなんだろうこの子。


< 207 / 231 >

この作品をシェア

pagetop