溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


壁の時計を見ると、朝八時を過ぎたところ。疲れていた割には早く目が覚めたみたい。

ベッドのそばに置いていたバッグからスマホを取り出すと、誰からも特に連絡はなかった。

理一は……まだ寝てるかな。起きたとき、私が家に帰ってないことに気づいたらどう思うんだろう。少しは、心配してくれるのかな……。

私は深いため息をついてスマホをバッグに戻し、寝室を出た。

リビングダイニングに移動すると、レースのカーテンから日の光が差し込んでいた。

目を細めながら、窓辺に近づき、カーテンを開けて目の前に広がる景色を眺める。


「夜景もいいけど、朝もきれいだな……」


雲ひとつない青空のもと、朝日に照らされたたくさんのビルが白く輝いて、なんだか元気が湧いてくる。

下北沢のアパートでは、隣の建物との距離が近すぎて、窓からは何も見えなかった。

まあ厳密にいえば、その隣の建物の、小汚い土壁は眺め放題だったけどさ……。

そこまで考えて、首をぶんぶん横に振った。

今は、あの場所と……理一のことを思い出すのはやめよう。

そうだ、気分転換に朝ご飯の準備でもしようかな。

私はそう思い立ってキッチンまで行き、冷蔵庫や棚を物色してみるけれど。


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