夕食は、これまた甲斐の行きつけだという鉄板焼き店にお邪魔した。

小ぢんまりとしながらも料亭のような雰囲気のお店は、カウンター席の目の前でシェフ自らが鉄板焼きのパフォーマンスをしてくれ、味だけでなくその華麗な技も楽しむことができた。


「はぁぁ……余は満足じゃ」

「だろうな。シェフも驚いてたぞお前の食べっぷり」


帰り道の途中、助手席で幸福なため息をつく私を、甲斐が運転しながら笑う。

私にとって鉄板焼きのお店は初体験だったし、使っているのは高級食材ばかり。

目の前でジュウジュウ音を立てていい香りを漂わせる霜降り肉や伊勢海老にいちいち感嘆の声を上げてしまったけど、そういえばシェフの反応は見ていなかった。


「……むしろちょっと引いてたかな」

「まさか。自分の作ったものをうまそうに食ってもらえて、料理人冥利に尽きると言ってたぞ」

「そっか……よかった」


ホッとしながら、窓の外に視線を向ける。眠らない東京の街は、午後十時を過ぎた現在も、まだきらきらと明るい。


「なんか、帰りたくないな」


私の口から何気なく、そんな言葉がこぼれた。