黄金のラドゥール
憂いの皇子様
「コウジュン様。」

「ああ、」

「ハル様はお心が乱れているご様子。
ただでさえお考えがわかりやすい方です。
このまま陛下への謁見にお連れして大丈夫でしょうか?」

「そうだな。」

信じていると思っていた相手に、突然、利用していると告げられたのだ、突き放されたように感じているだろう。
だが、その分かりやすさといったら、、

この城で暮らしているメイドたちでさえ顔色に出さないことくらい心得ているのに。

あれでは、いつ如何なる者にでも簡単に心の内を知らせてしまう。

彼女の気持ちの表れやすいことを知っていながら、何故今告げてしまったのか。
告白の時期を少し悔いた。


小さく震えていた肩や小さな手が浮かぶ。
残念な気持ちも同時に少し沸いていた。

もう少し傍でどんな反応を見せるのか見ていたいと思っていたのに、
よかったのだろうか、と。


これからはハルとの間に確実に壁ができるのだろう。
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