嘘つきな恋人
その4 ふたり。
10月。

私は夜勤明けのしおりちゃんに

「ご飯一緒に食べませんか?」

と聞かれ、Dragonに予約を入れ、待ち合わせらことになった。


しおりちゃんとこうしてご飯を食べるのは6カ月振りだ。

仕事の時は普通に接しても、

顔を合わせるのは辛い事だったのかもしれない。

なにしろ、私達は、不本意ながら恋敵になってしまったのだから…



個室に案内され、

しおりちゃんと向かいあって座り、

カクテルを一緒に飲む。

「本当に別れちゃったんですね。」と私の顔を見る。

「別れるでしょ。許せないもん。」と笑うと、

「他の知らないオンナと浮気したなら、許せましたか?」と私の顔を覗く。

「仮定の話は意味がないでしょ。」と真面目な顔で言うと、

「…私は、後藤先生への気持ちはさめました。
別れた美鈴さんの後を追いかけたりして…
大人の男の人だと思っていたのに
カッコ悪いです。」

としおりちゃんは顔をしかめたので、私も少し笑って見せた。


かっこ悪くなるのが恋なんだけど…
まだ、この年下の女の子には
わからないんだよね。

「最近は、検査科の〇〇さんがカッコイイと思って。」

と明るく話しを続けるけど、
しおりちゃんは少し痩せたかな?
ごめんね。傷付けて…と心のなかで思うけれど、

私が謝るのはおかしいことなので、

相槌を打ちながら、これまで通り私はしおりちゃんと一緒に笑った。

< 66 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop