溺愛までノンストップ〜社長の包囲網から逃げられません〜
社長が溺愛するまで

聖夜side


病室の祖父からの遺言


「桐谷 麗美と結婚して幸せにしてやってくれ」


桐谷家の亡くなったおじいさんは、祖父の命の恩人だった。


その恩を返しきれないまま死んでしまう自分の代わりに、俺にその意志を継げと言ってあの世に行ってしまった。


受付に立つ、俺好みのいい女を見つけた。


今まで、家の為に結婚すると思っていたから、女なんてその場かぎり楽しめればそれでよかった。


そんな俺が、目を奪われ惹きつけられる。


その女こそが、桐谷 麗美だった。


なんだか、運命的な物を感じ、しばらく様子を見ている間、取り引き先の男どもに向ける笑顔を独占したいと思うほど、麗美の笑顔に心を奪われていた。


どうしたら、俺だけの女になる?


女なんて向こうから寄ってくるから、自分から行動を起こした事なんてない俺は、どう話しかけていいかわからなかった。


そんな時、祖父が桐谷家にお金を貸し、3000万円ほど返済が残っている事を思い出した。


麗美と結婚すれば、俺だけの女になる。


そんな安易な考えで桐谷家に結婚の申し込みをすると、借金の為に娘を売るような事は出来ないと断られた。


俺の安易な考えのせいで、桐谷さんが家を売却して返済するつもりだと麗美からビンタと共に聞いた時は、なんでそうなったのかわからず、急いで桐谷さんに連絡を取った。


家を売却して3000万円を用意するから、娘に関わらないでほしいと頼まれたが、既に俺の心には麗美しかいなかった。


結婚するなら、麗美以外いない。


「実は、祖父の件もあったので内緒にしていたのですが、麗美さんと僕は付き合っているんです。祖父が亡くなり、障害が無くなった事で結婚に踏み切るつもりで桐谷さんに先に了承を得ようと、つい先日ご連絡させていただいた訳です」


「はぁ…」


納得出来ない様子で相槌を打つ桐谷さん。


「麗美さんも、3000万円の事を気にしてなかなか結婚に頷いてくれません。そこでどうでしょう⁈私達の間にできた子ども達に桐谷さんがそのお金を残すという事にしませんか?返済したい桐谷さんと祖父が亡くなり受け取る資格のない僕。そうすることでお互い納得してチャラにしましょう」


「麗美は納得するでしょうか?」


「大事な家を売却しなくて済むんです。後は、僕が彼女を説得します。…だから、お願いがあります」


「なんでしょう?」
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