不埒な専務はおねだーりん
おねだり4:キスをしてくれないか?

鼻先5センチ。

それこそ一瞬でキスが出来そうな距離で、しどろもどろになりながらも今度こそ篤典さんを諫める。

「な、ななな何言ってんですか、もう!!冗談でもそんなこと言ったらダメですよ?」

キスして欲しいなんて、また誰かに聞かれたらとんでもない事態になってしまうではないか。

笑い飛ばして誤魔化そうとしたが、篤典さんは至って真面目に言うのであった。

「早く、かずさ。また浜井くんに邪魔されないとも限らないからね」

篤典さんはシイッと声を潜めるように促して、お口チャックと親指で私の唇を撫でた。

唇を撫でられて背筋がぞわっとしたのは、どことなく香ってきた篤典さんの色気に当てられたからだ。

つまり、それだけ本気だということだ。

は、早くって言われましても!!

(キスなんてできるはずないでしょ!?)

オフィスだから、勤務中だからという理由が通じる人なら、今まで苦労してきていない。

「かずさ、まだなのかい?」

篤典さんは強固な姿勢を緩めることなくキスをせがむ。これまでのおねだりと違って譲歩する気配が一切感じられない。

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