不埒な専務はおねだーりん
おねだり6:君の枕にしてくれないか?

「ただいま……」

私はパンプスを脱ぎ捨てバッグを床に置くと、電気をつけてグッタリとソファに横になる。

このごろちゃんと眠れていないせいか、帰宅するとすぐに横になってしまう。

いつもならこの辺でお母さんにどやされるのだが、今日はリビングには誰の姿もなかった。

(そっか……別荘についていったんだっけ……)

宇田川夫妻は夏の盛りになると毎年、親しい友人達を招いて軽井沢の別荘で数日間を過ごす。

現地に住んでいる管理人だけでは人手が足りないからと、今日からお母さんも一緒についていくことになったと言っていたのをすっかり忘れていた。

私は仕方なく母が冷蔵庫に作り置きしてくれたカレーを温めなおして、ひとりきりの夕食を済ませる。

シャワーを浴びて、お肌のお手入れを念入りに行い、布団に入れば感じるのは静寂だった。

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