わたし、結婚するんですか?
会わせたい人が居るって言ってたわよ

 




 入江は電話のイメージ通り、若くて可愛らしい女性だった。

 ラウンジで珈琲をご馳走になりながら、洸が入江と話していると、再び、一真が現れた。

「津田様、入江から話聞けました?」
と訊いてくる。

「あ、はい」
と洸は頷いたが、得られた情報は、たいしてない。

 どうやら、自分は此処にひとりで下見に来たらしい、ということと。

 しばらく空いていないことを確認して、がっくりして帰っていった、ということくらいしか。

 でもそうか、と洸は思った。

 それで、急にキャンセルが出たと訊いて、即オッケーしたんだな、と。

「実は、あれからちょっと、津田様からいらしたときのことを思い出してみたんですが」
と少し考えるような顔をしたあとで、一真が言ってくる。

「やはり、普通に浮かれてらしたというか、ちょっと挙動不審だったというか」

 佐野さん、佐野さん、と一真は入江に止められている。
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