俺様御曹司とナイショの社内恋愛
第3章/時すでに遅し


乾杯、と向かいの白石がシャンパングラスをかかげる。

「かんぱい・・」郁はもごもごとつぶやく。

「羞恥プレイはお気に召さない?」
にやっと笑う。

羞恥プレイ・・・テーブルに突っ伏したくなる。

「離して〜〜っ」
「離しませんよ」
「あ、その表情イイ! 男性のほうは、あくまでもポーカーフェイスでお願い」
なるみ女史の注文に応じて、様々なポーズを(無理やり)とらされたあげく、スケッチまでされたことは、末代までの恥だ。


商談がうまくいったお祝い、と白石に連れられてきたのは、銀座のずいぶんと外れにあるフレンチレストランだった。
「駅から遠いから、込まないし気取った雰囲気じゃないところが気に入ってる。料理の味と酒の揃えは保証するよ」とは白石の弁だ。

店内は、広々とした円形のフロアにテーブルが配され、加えて壁面をくぼませた、かまくらのようなスペースが幾つか設けてある。
白石と郁が通されたのは、そんなかまくらの一つだった。

先週の苦い教訓があるのに、それでも白石の誘いに付いてきてしまったのは、なんだかんだ郁とて嬉しかったのだ。
新しいゲームの企画が始動した。そこにささやかなりとも自分が加わっていることが。
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