それはちょっと
Kiss5*それはちょっと
いつか、白馬に乗った王子様が自分の前に現れる――子供の頃、誰もが夢を見て憧れを抱いたことだろう。

私も子供の頃はそれを夢見て憧れを抱いていた。

でも時間が経つにつれて、年齢(トシ)をとるにつれて、自分が“美人”だと言うことがわかって、気づいてしまった。

私の前に、白馬に乗った王子様が現れないんだと言うことに。


あのことがあった翌日に出社すると、案の定で部長はすでに出社して仕事を始めていた。

――やっぱり、君はかわいいよ

部長から言われたあの言葉が頭の中に浮かんできて、頬に熱が持ったのがわかった。

私がかわいい訳ないじゃない…。

そうだ、あれは周りから“かわいい”と言われなれていないから戸惑っただけなんだ。

いつも“美人”だ“キレイ”だなんて言われているから。

そう自分に言い聞かせると、自分のデスクへと足を向かわせた。
< 43 / 90 >

この作品をシェア

pagetop