偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
エピローグ
南向きの大きな窓に、真新しい白いカーテンをとりつける。
「よし、完璧!」

作業を終えて、私はリビングルームの真ん中から部屋を見渡す。

「は~。広いリビング、ウォークインクローゼット、ミストサウナつきの
お風呂。こんな素敵なマンションの住める日がくるなんて……」
私は改めて、幸せをかみしめた。が、次の瞬間、あることに思い至って、はっと顔を青くする。
「どうした?」
段ボールの整理をしていた光一さんが手を止め、こちらを見る。
「お、思い出しちゃった。同じように幸せの絶頂から叩き落された結婚式の夜のこと」 

(やっぱりこれも夢だったりして?明日、目が覚めたら彼氏どころか男友達すらいない崖っぷち受付嬢に戻ってる気がする……)

「うぅ、簿記の資格でも取ろうかな。経理部なら常に人手不足って課長言ってたし、受付クビになっても働かせてくれるかも……」

想像だけで落ち込んでいる私を横目に、光一さんがつぶやいた。

「妙なトラウマ与えちゃったみたいだな」

光一さんは私の前までくると、私の両手をぎゅっと握った。

「へ?握手?」
「結婚式の誓い、正直、なんの気持ちもこめてなかったから。改めてさ、知らない外人なんかじゃなくて、華に誓うよ」
光一さんはまっすぐに私を見つめた。
「結婚するのに丁度よさそうな相手。そう思ってたのは事実だし、いまさら否定はしない。軽く扱うようなマネして本当に悪かった」
彼が目を伏せ、頭を下げるので、私はかえってあわててしまった。
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