シンデレラLOVERS

日菜琉視点


「彼氏、誕生日なの? だったら巻いたげるよ」


学校に行く前。
有宮くんに渡すプレゼントを用意してたら、葉琉ちゃんが温めたヘアアイロンを持って近づいてきた。


わたしに彼氏が出来たって、毎日のお弁当作りでバレてしまってから。
やたら葉琉ちゃんが髪の毛をアレンジしてくれるのが、嬉しいような恥ずかしいようなふわふわした気分になる。



有宮くん、気付いてくれてるかな?



……きっと気付いてないだろうな。
わたしと居るときの有宮くんはいつだって退屈そうな顔をしてる。


だから、わたしが彼の瞳に映ってるワケがない。


どうせ、わたしが彼女なのも冬休み前までのこと。



有宮くんは格好いいから、女の子に不自由することなんてないと思う。



だったらせめて、頭の片隅にでも残して欲しい。
たった一ヶ月でもわたしと過ごした時間を……。



放課後。
いつもの待ち合わせ場所で有宮くんと合流してから、わたしの胸はずっとドキドキいってる。



「有宮くんっ」



出来るだけ満面の笑みを携えて、隣の有宮くんに呼びかけた。


「なに?」


いつもより声が弾んでいたせいか。
有宮くんと不意に真正面から視線が重なった。


久しぶりかも……。
ちゃんとこっち向いてくれたの……。


いつもは退屈そうにそっぽばかり向いてる顔が、今はわたしを正面から見ている。


「ハイッ!」


それが嬉しくてわたしは用意してきた誕生日プレゼントを、意気揚々と有宮くんの前に差し出した。


「なに……これ?」


反射的に受け取った有宮くんは、怪訝そうな顔付きでわたしを見てる。



……もしかして忘れてるのかな。



それとも……わたしにこんなことされるの迷惑だったかな。



「お誕生日おめでとう!」



不安で萎んでしまいそうな気持ちを奮い立たせ、出来る限りの明るい声を出してみる。


それを聞いた有宮くんは、一瞬の間を置いてからハッとしたようにわたしを見た。


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