恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「清奈……」
「私が突き放したからっ、だから景臣先輩は……!」
私の前からいなくなったんだ。
どこまでも自分を犠牲にして、きっとこの先も自分の幸せを願えずに生きていくんだ、あの人は。
「私は、なんて事を……っ」
「いい加減にしろ!」
「っ……!」
業吉先輩の怒鳴り声が部室に響く。
驚いて彼を見れば、悲しみを堪えるように私を咎めるように睨んでいる。
「お前は景臣先輩のために、なにをしたんだよ! 自分が傷つきたくないから、景臣先輩を探しに行かねぇーだけだろ!」
「私が……傷つきたくないから……?」
「探しても景臣先輩に会えなかったら、自分の気持ちを伝えられない。これ以上絶望したくねぇから、嘆くだけなんだ!」
あ……確かにそうだ。
私はまた、自分の事しか考えてなかったんだ。
本当にいつまで弱虫で、情けない人間でいるつもりなのだろう。
彼は自分の幸せより、私の幸せを願った。
そんな君のためなら、いくらでも傷ついていい。だから──。
「会いに……行きます」
私は涙を手の甲で拭うと、静かに立ち上がる。
ここで泣いてたって、景臣先輩が帰ってくるわけじゃない。
何年、何十年かかってもいい。
君を見つけ出して、私たちにはあなたが必要だって伝えに行くんだ。
それから……私は他の誰でもなく、藤原景臣というたったひとりの男の子が、世界で一番大好きなんだよって伝える。