好きの海に溺れそう
ワクワク? キュンキュン? 修学旅行
~杏光~

「…ふーん、あんたも大胆だね」

「だって抑えられなかったし…」



体育祭も終わり、残ってる行事といえば修学旅行。



今は一日目の予定である首里城巡りと自由行動を終えて、部屋で日夏にこの間あった海琉との話をしている最中。



「まだ二か月経ってないくらいだし、そんなに焦らなくていいんじゃない?」



日夏は椅子に座って、ベッドに寝転がるあたしを見ながらおやつのチーカマを食べてる。



「あたしも分かってるんだけどね…。今までの人にはなかった感情…。あたしからしたくなる」



本当に好きでしょうがないみたい。



「で? 日夏の方はどうなの?」



あたしはニヤつきながら手でハートを作って「あ・ゆ・む・と♡」と口パクした。



「は?」

「誘われたんでしょ?デート」

「まあ…」



今日は日夏とデートするって決めてるんだ。



普段日夏の恋の話について聞かない分、今日は絶対に聞き出してやる。



「デート。行くの?」

「デートなんて、そんな大げさなものじゃないでしょ」

「じゃあ行くんだ」



あたしがそう言うと、日夏は険しい顔をした。



解きたくても解けない、難しい数学の問題を出されたみたいな顔。



日夏は寝返りを打った。



「なんていうかさあ…」



天井を見ながら日夏が言う。



「なに?」

「…信じきれないんだよね、あいつを」

「信じきれない?」

「出会いがナンパじゃん? それだけにチャラチャラしてるってこと」



確かに、歩たちが最初、あたし達に声をかけてきたんだ。



それで歩が日夏に一目ぼれして…。



歩が不誠実に日夏を好きとは到底思えないけど、当の日夏からしたら100%信じ切るのは難しいんだろうな…。



でも…。



「そう思ってるってことは、『信じたい』って思ってるんだよね?」
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