きみが嘘をつくから。

無意識




「俺、ちょっとトイレ。」

教室へと向かう途中、そう言って大輝を含む友達と別れて、用を済ませた後一人で教室へと向かった。



ドアに付いた窓から教室の中が見え、そこに乃々香と大輝の姿が見えた。


一瞬、乃々香がこっちを向いた気がする。


俺が教室に入ったと同時に乃々香が席に向かったのは、俺と話したくないからかな、偶々だよな。



「春馬は一番後ろ。」

先に席を確認していた大輝が教えてくれた。



1番後ろとか寝放題じゃん。


まぁ、どこでも寝るけどな。



席に向かおうと振り返ると、乃々香が俺の斜め前の席にいた。



気付いてないふりをして通り過ぎようとする。




「春馬。」


あと一歩というところで袖を引かれた。


久々に呼ばれた名前は少し擽ったい。



「ん?」

立ち止まって乃々香を見たら、俯いていて顔が見えず、袖を掴む腕が微かに震えている。


俺はその手に無意識に触れていた。



「また同じクラスだね。」

俺を見上げた乃々香は、いつも通りの自然な笑顔だった。


いや、いつも以上に嬉しそうで、自然で、頬が赤くて可愛い。



「だな。席も近いし、よかった。」

それが嬉しくて、俺もいつも以上の笑顔になれた気がする。


また無意識に触れていた手を握った。


< 11 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop