・キミ以外欲しくない
2


「今日の議事録です」


恐る恐る手渡したのは、会議の内容などを纏めた議事録。
無言で受け取り目を通しているのは、会議を途中退席した副社長だ。

副社長の反応を待ちながら、キョロキョロしている私は、明らかに挙動不審者。
それも仕方がない。
私が日々業務している職場よりも、上階に位置している副社長室からの眺めは最高で。
夕方から夜にさしかかる空色が移り変わる瞬間を、誰にも何にも邪魔される事無く眺められているのだ。
オレンジと藍色の二色の空が、副社長の背中を照らしている。


適度にセットされている髪。
資料に目を落としている伏し目がちの瞳に、長いまつげ。
綺麗な鼻筋。
なめらかそうな肌。
少しポテッとした唇。


こんなにじっくりと男性を眺めたことなんて、今までにないけれど。
私が知っている男性の中でも、ダントツに綺麗な顔をしていると思う。
仕事中だということも忘れ、見とれてしまう程に惹きつけられている自分がいた。


このまま見ていたいなぁ。


座り心地の良さそうなレザーの椅子に腰かけ、資料に目を通している副社長は。
顔色一つ変えずに視線だけが左右に動いていた。
< 17 / 61 >

この作品をシェア

pagetop