最後の恋 【番外編: 礼央目線】
杏奈には、詳細を言おうかどうか迷った。


結果的に彼女も知っている人だったし、詳しく言うことで余計な恐怖を植え付けることはしたくなかった。


悩んだ俺は、結果だけを伝えた。


もし彼女が自分から聞いてきた時は、その時は答えよう。


そう思っていたが、彼女が男について詳しく聞いてくることはなかった。


男が長期の出張に出ることは弁護士から聞いていたから、その間に引越しを終わらせた。


誓約書を書かせたとは言え、俺もあの男の顔は二度と見たくはないし杏奈にも会わせたくなかった。


新しいマンションも契約が済み、引っ越しも無事に終わると彼女はここを出て行った。


会社に行けば彼女には会えるのに、あの時無性に感じた不安がまた俺を襲う。


嫌な予感しかしなかった。
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