最後の恋 【番外編: 礼央目線】
目が醒めると俺の腕の中にいた彼女はいなくなっていた。


まだ出て行ってからそんなに時間は経っていないはず。


まだ微かに彼女のぬくもりが残っていたから。


テーブルの上に置いてあった細長い箱を手に取り開くと、昨日彼女の首につけてあげたダイヤのネックレスが綺麗に納められていた。


いつから…いつから彼女は別れを考えていたんだろう。


車を走らせながら彼女と再会してからの日々を思い返していた。


電話は何度しても繋がる事はなかった。


マンションまで行っても会ってはもらえないだろう。


だけど、何もしないよりはマシで何かをしていないといられなかった。


部屋にいるのかいないのかさえ分からない。


午後からまたチラつき始めた雪のせいで空は薄暗くなっていたが、彼女の部屋の電気が付くことはなかった。
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