すぐに背中を向けて出て行こうとする秘書さんに慌てて声をかけて頭を下げた。

私の声に驚いたように秘書さんは足を止めて私を振り返った。

「いえ、谷口さんが気にされるようなことはありませんよ」

私に視線を合わせて優しく微笑んでくれたが、私の顔を見て、すぐに少し眉間にしわを寄せて「あ」と呟いた。

え?やっぱりまずかったかな。

私の表情が曇ったのがわかったらしく、秘書さんは
「すみません、大丈夫ですから谷口さんは安心して賞品を受け取って下さいね」
とまた笑顔で言った。
今の間は何だろうと思いつつ歩き出した林さんの後を追った。

秘書さんに案内されて社長室に入ると、社長の他にカメラを構えた広報担当者2人がいた。

「やぁ、君が谷口早希さんだね。待っていたよ」

社長は座っていたソファーから立ち上がり私に近づいて私の腕を取り握手をしてくれた。

私は緊張して慌ててしまう。

「い、いえっ。あの、パーティーの際は大変失礼いたしました。体調不良になってしまい途中退席したせいでこのようにお手間を取らせていただくことになってしまいまして」
とあわあわしながら頭を下げた。

「いや、そんなこと気にしなくていいから」
社長は笑顔だ。

「社長、では賞品授与を」と秘書さんに促される。

大きな目録を私に渡すポーズで広報担当者が何枚も写真撮影をした。

私は緊張でくらくらしてきて、笑顔なんて作れない。

引きつっていると社長から「写真はもうその位でいいんじゃないか」と助け船が入った。

た、助かった。

社長ありがとうございますと心の中で手を合わせた。

社長は45歳。
かなりのイケメンである。
世の中にはこんな素敵な40代がいるんだなと夢を見させてくれる存在。
もちろん既婚者なのだが全女子社員の憧れの的だ。

私もその一人。