彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
改めて高橋の顔をじっと見る。

そういえば結構イケメンなのかも。
彫りが深く顔が濃い。体格がいい。とにかく全部大きい。学生時代のスポーツは何って言ってたかな。
水球?いや違う。アメフト?いや何か他のマイナースポーツだったような。
まあでも何でもいい。

私の好みじゃないけど、そういえば高橋ってモテるよね。
後輩の何人かに「早希先輩って高橋さんの彼女さんですか?」って聞かれたことあったし。
違うと速攻で否定すると「私が告白しても構いませんよね」って了解を取るってよりはけん制されたことも。

ああ、親が社長ってことは御曹司とかセレブ系なのか?
女性が寄ってきて困るとかそっち系??

「おい、谷口早希。お前さ、わかってないと思うけど、口を開いてなくても今お前の考えてる事って周りにダダ漏れになってるぞ」
「うん。私もそう思う」
高橋と由衣子がそんなことを言う。

「えー、そんなことありえない」
口を尖らし反論する私に
「酔うと表情筋が緩むのかな、わかりやすくなるから、これから気をつけた方がいいぞ」
そう高橋は言った。由衣子を見ると由衣子もうなずいている。

へえ、そうなんだ。ダダ漏れかぁ、気を付けよう。

いやいや、そんなことより!
私には高橋に言いたい事があったじゃないか!

「それより高橋っ!何で信楽焼の話を広めるのよ!ひどいじゃない!」
私は猛抗議した。

「俺は佐本にしか言ってないぞ。まあ、確かに佐本には言った。ごめん、ごめん」
謝っているとは到底思えない笑顔で謝ってきた。

「話を広めてると言えば、それ、俺じゃなくて神田部長本人だろ。あの人が一番大ウケしてたからな。次の朝一番の役員会議の後で言ったらしいじゃんか。それに、現場を見てた奴らが10人以上いたんだから広まるのは仕方ないだろ。諦めろよ」

あー、言われてみればその通り。

がーん。
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