恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
近づいたり離れたり


*******


それから私は仕事に没頭した。

“先輩のプライベートには立ち入らない”ということは、仕事をする上では全く障害にならなかった。

思えば私たちは普段からそうだったし、先輩は何も変わらず面倒を見てくれる。

ただ私のほうが勝手にショックを受けただけなのだ。

しかし落ち込んでいる暇はない。

私の仕事は企画が通ったことで今は波に乗っている状態。

書庫に歴代のコーヒーメーカーの営業企画書が保管されていると課長にアドバイスをもらい、私はさっそくそれを取りに行った

「あの、水野さん!」

書庫に入り扉を閉めようとすると、とある女性社員がその扉を押さえ、こちらへ入り込んできた。

見たことがある。たしか、コスメ部門の荒木さんという人で、よく浅見さんと一緒にいる美人な先輩だ。

「はい。何か?」

「あの、聞きたいことがあるんだけど……今忙しいかな?」

「いえ、ちょっとなら大丈夫です」

お化粧が上品でとても綺麗で、おそらくこんなに発色がいいのはスローライフの商品ではなく、海外ブランドのものだろう。

彼女から漂ってくるコロンも高級な香りがする。

< 42 / 99 >

この作品をシェア

pagetop