愛しくて苦しい物語

赤ずきん

〜ジンと赤ずきん〜
空は段々と曇になってきた。風もそんなに吹いていない。ジンはボケーッと寝転がっていた。その時、ガサッと草が揺れる音がした。ジンは勢い良く起き上がり、その方を見た。
「だ…誰だ?!」
ジンは最近、行方不明になっている子達を思い出した。そっと短剣を握りしめた。
「ごめんなさい!脅かすつもりはなかったの!」
現れたのは赤いずきんを被った少女だった。輝くような銀髪に青と赤のオッドアイの少女だった。ジンは初めて銀髪とオッドアイを見たので不安になり、もっと強く短剣を握った。
「この姿を見て驚くのは仕方ないよね…。でもお願い!実は道が分からなくなっちゃって、病気になった祖母の家まで行かなくてはならないの…。」
ジンは少し短剣を握るのを弱めた。
「母も父も他界して、今は祖母だけなの。でも私もいい年だし、働かなくてはならなくて…街に出ていたんだけど、祖母が病気になったと聞いて…。」
少女はボロボロと涙を零している。ジンは母の事を思い出し、短剣から手を離した。
「森の途中までなら送ってやる。」
少女はパァっと笑顔になった。その顔が何処と無くジンの母に似ていた。
「僕の名前はジン。ジン・ハーバード。君の名は?」
「…名前は言えないの。でも、皆からは赤ずきんと呼ばれているわ。」
「そうか。宜しくな、赤ずきん。」
ジンは赤ずきんに手を差し出した。(…獲物と仲良くするなと言われているけど…ここは出さない方が怪しまれるよね。)
赤ずきんはジンと握手を交わした。ジンは先頭に立って歩き出した。
「そうだよ、赤ずきん。森の奥に連れ込むんだ。」
草の中から2つの赤い光が歩く2人を見つめていた。
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