愛しくて苦しい物語

赤ずきん

〜再会〜
その後もステラは子どもを森の奥に連れ込んでは喰っていた。短かった銀髪も今では長く、容姿も美しく育った。
「最近、少子化が進んでいる。今年は少し街へ出て、違う食料を探そう。」
「はい、おばあ様。」
ステラは赤いずきんを被って、街へ出た。多くの人間に多くの食料があった。林檎に桃、牛に豚…。(人間達はこの食料を『お金』というもので交換するのか…馬鹿馬鹿しい。欲しければ奪えばいいものを…)と考えていると、1人の豚のような人間にぶつかった。
「どこ見て歩いてんだ?!」
ぶつかった豚はステラの方を見た。光の無いステラの瞳に豚は恐ろしいと感じた。
「…済まなかった…」
そう言ってステラはその場を立ち去ろうとした。しかし、ステラは足を止めた。知った顔が目の前にいたからだ。
「…ジン…」
「ステラ…何故ここに…?」
背が高くなり、筋肉もついていて、分かるのは少し残っている面影と匂いだった。ジンはステラの手を取り、走り出した。
「ジン!待って!!」
長い間走り続けて、ようやくジンは走るのをやめた。そこはジンの匂いが強い場所…ジンの家だった。
「どうしてここに来たんだ?」
「…少子化が進んできたから、新しい食料を探しに来たの。」
ジンは振り返ってステラを見た。何故かほっとしたようなジンの顔にステラは驚いた。
「そうか。まだ、仲間とは上手くいっているんだな…」
ステラは何を言っているのかわからなかった。ただ、何故か『好き』という気持ちが溢れてくる。(ダメ…この人間は私を裏切った。信じられるのは仲間だけ…)
「ジン。私をジンのお嫁さんにして欲しいの。」
ステラはジンの厚い胸板にスリついた。(今度は私がこの人間を…)しかし、ジンはステラを引き剥がした。
「ダメだ。」
「何故?私はあなたが好きなの…あなたが…」
「僕もステラを愛してる…ステラ以外好きになれないんだ。でも…」
ジンは話の途中でステラの手を取り、森の方へと追いやった。
「ジン!!」
ジンはステラに一通の手紙を渡した。
「それを森の中で読め。」
そう言うとジンはまた走り去った。
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