職場恋愛

嫉妬

出社して早々、島田は休憩室のど真ん中で土下座してきた。


「ほんとにごめんほんとにごめんほんとごめん。聞き方間違えた。まじでしくった。休ませてごめん。出勤させてごめん」


土下座した状態で早口に言われるとただの怖い呪文にしか聞こえないからやめてほしい。


「頼んだの俺だし、大丈夫だから」


周りにたくさん人がいるからぜひやめてほしい。


「しーまー?」


土下座する島田の後ろから山野さんが入ってきて、島田を呼ぶ。


目の前にいるのが島田ですよ。


「え、こうちゃんなんでいんの」


急にトーンが低くなって島田をスルーして俺の方へ来た。


「………助勤?」


「はあ!?」


詰め寄られて小声で答えたら大きな声を出された。

耳に響く…。



「おいしまぁ。お前がいればこうちゃんいらねえよなぁ?なんで止めなかったんだぁ?あ?」


てっきり島田の存在に気付いてないのかと思っていたけど、しっかり立たせて島田の胸ぐら掴んでらっしゃって、怖いなぁ。


「だだだだから…その…止めたんですけど………逢坂ってほら、頑固だから…」


怖い怖い山野さんにビビってるせいでいつものお気楽な島田はいなかった。


「おはよございま〜す。うぇっ、山野…なんで、、え!逢坂も…なんでいんの!?」


あくびをしながら入ってきた青葉さんは2度驚いた。


「青葉はどう思う?11連単休8連のこいつが今日ここにいること、どう思う?」


山野さんは標的を島田から青葉さんに移して尋問する。


「え、と…それは…やっぱ、良くないんじゃね?病欠って真鍋と岩木さんだけだし、俺も珍しく早番だし?」


岩木さんがいないのはかなり痛手だろ。


いつも遅番ばかりの青葉さんも実はベテラン。
山野さんにはビビってるけど。


「だよなぁ?こうちゃんいらないよなぁ?
よし、こうちゃん帰れ。今すぐ帰れ。寺内には俺から伝えておくから、早急に帰れ」


何もそんなに言わなくても。


「山ちゃん…今グループLINEで飯島さんも休むって言…」


「あぁ?」



島田がLINEの画面を見せたら山野さんはより一層怖い顔をした。



「こうちゃん帰れねえじゃん。つーか、またそいつらか。次来たら許さねえ。
こうちゃん、誰か行かすから休めるとき休めよ」


山野さんが怖い顔で出て行ったのを見てみんなの肩の力が抜けたのが分かった。


取り寄せリストの件以来、山野さんを知らなかった人も含めてその場にいた全員が山野さんを恐れるようになった。



島田に関しては本気でビビってるのかどうかは分からないけど、多少は怖いんだと思う。


強いからね。
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