ヘップバーンに捧ぐ

-翔駒side-

はじめてみた時、一瞬で
引き込まれたんだ。

気のせいにして、忘れようとした。
けれど、日が経てば経つほど
君が色濃く目に焼きつかれてて
離れないんだ。






自分は、生まれながらにして
ASAKURAを継がなければならないことは
わかっていた。

別に、不満もなかった。
物分かりがいい子供だっただろう。

次第にわかってくる。
自分に寄ってくる人間は
全て俺自身を見ない。
俺を飛び越えて、バックを見ている。

俺は、所詮透明だ。
そう思ってからは、少し自暴自棄に
なっていたかもしてない。

決して悪くはないだろう見た目と学歴。
極め付けのASAKURAを背中に背負ってる限り
女は寄って来る。
読んでもないけど、男も来る。

大学卒業後、MBAを取得し
一通り経営について学び、
海外のASAKURAに本名を隠して
入社後営業に配属された。

仕事は、正直楽しかった。
やれば、成果が出る。
本名を隠してるから、俺自身を見てくれる。
仕事にやりがいを覚え、
海外支社の業績も前年比の300%まで
持って行った。

そんな時、自分の出自がバレた。
それまで、俺のことを嫌ってた連中は
手のひらを返した。

毎日、香水の塊みたいな女に纏わり付かれた。

正直、疲れた思った時
会長であるじい様から日本に帰って来るように
命令が下った。

ぶっちゃけ、かったるいと思った。

自分の出自を知ってる下心丸出しの連中に
ゴマを擦られ、
あわよくば、甘い汁吸おうと画策してるのが
見え見えの連中ばかりだと思うと
反吐が出た。

そんな時、暇潰しで立ち寄った
小さな写真館で出会った。

運命を変える一枚の写真と。


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