俺様Dr.に愛されすぎて
9.柔らかな膝の上





晴空の下で、ぎゅっと握った手の大きさと、体温が忘れられない。



思わず込めた力に、彼もしっかりと応えるように握り返してくれた。

その感触が、まるで今も絡みつくように。消えることはない。





日曜のデートから5日が経った、金曜日の午前。

ほとんどの社員が出払い静かな営業部のオフィスで、私は目の前の仕事もそのままにぼんやりと自分の手を眺めていた。



少しネイルがはげはじめてきてしまったその手を見て思い出すのは、先日のデートで一日中握っていた手の感触だ。



日曜はあれから、ふたりで散歩を終え、街のほうへ足を伸ばしてお店を見たり、話をしたりして……夜は夜景を見ながら食事をして、そのまま何事もなく別れた。



ふたりきりのデートだし、これまで何度となくキスをしているわけだし、もしかしたらなんて想像もしていなかったわけじゃない。

けど、真木先生は1日通して予想以上に紳士的で、手をつなぐ以上のことはなかった。



ずっとつないでいた手が、愛しくて、別れ際離したくないと思ってしまった。

その感触と気持ちは、もうすぐ一週間が経とうとしている今もまだ消えることはない。



< 107 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop