あなたのことは絶対に好きになれない!
家に戻ってくると、さっきと同じように二人並んでソファに腰掛ける。

…….さっきのようなピリピリとした空気はなくなっている。

だけど、心のモヤモヤがなくなった訳でもない。


「……改めてもう一度聞くけど」

私に視線を向けながら、彼はそう口を開き、



「本当に何とも思ってないんだよな? さっきの男のこと」


と、確認するように再度聞いてきた。


そんなに気にしてくれているのかなと思うと、決して嫌だとは思わない。



「うん、ただの友だちだよ。急に抱き締められて驚いたけど、私からの特別な感情とかはないから」


自分の気持ちをしっかりと分かってもらいたくて、彼の目を見つめ返しながらはっきりと言い切る。


すると、さっきは『良かった』と答えた彼は、今度は

「ごめん」

と謝ってくる。
一体何が〝ごめん〟なのかと疑問に思っていると。


「クミがまさか男に送られてくるとは思わなかった。
聞こえてきた会話とか雰囲気からして状況は把握したつもりだったけど、抱き締められてるの見たらイラッとしてしまって、つい冷たくした」


あ……それ、さっき家に来た時の態度のことかな?

そういうことだったんだ。
理由が分かって良かった。急に抱き締められたのは、きっと私にも隙があったからだし……。
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