恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
そんなイコールは成立しない


別に、京介くんが初めての彼氏というわけじゃない。
何度か付き合ったことくらいはあるのだけど、皆程なくして私から離れていった。


なぜかって。
皆、酷いのだ。


私の見た目から勝手に経験豊富だと思い込んで付き合って、私が中々そういうことに踏み出せないでいると離れていく。
思っていたタイプと違ったそうだ。


私の顔立ちは、可愛い綺麗と言われることが多いけれど、そこには声にはならない注釈が付くらしい。


派手そう。


派手な顔立ちは生まれ持ってのもので、私の経験まで派手だと思う方がどうかしている。


そうですよ、拗らせ処女ですが何か?
キスはいいの、気持ちいいし好きだと思う。


けどそっから先ってほんとに想像もつかない未知の領域なのであって、そんなはあはあ発情した顔ですり寄られたって怖いに決まってる。
なんで皆平気なの?


私、間違ってないよね。
と思うけど、さすがにもう、離れていかれるのは嫌だ。


それに皆、友達は問題なくできてるっぽい。
だったら多分、おかしいのは私だ、人よりちょっと痛がりなのは認めるし。


きっと、ちょっと構えすぎなだけ。
だから。



………。


「……ごめん、京介くん」

「ん? 何が」


深夜、日付が変わる少し前。
そろそろ帰るよ、と彼が玄関でしゃがんでスニーカーの紐を結び直すその背中を、私は項垂れて見下ろしている。


何が、と彼は言うけれど、私の謝罪の意味くらい、きっとわかっているはずだ。

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