恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
恋を知る夜



私は一体、東屋さんに何を求めているのだか。
無関係な癖に、無神経なことばかり。


ただ、見ていて苦しい胸の内を、上手く処理する方法を知らなかった。


だからといって、なんの言い訳にもならないけれど。


テーブルの上から床に落ちた筆記用具を拾い集めて、ペンケースに入れた。
歪んだテーブルと椅子を整えていたら、ノックの音てびくっと肩が跳ねる。



「一花さん、終わった?」


ひょこっと顔をのぞかせたのは、西原さんだった。


「あ……、お疲れ様です」

「お疲れ様ー。もう定時回ったから、皆ぼちぼち店に向かっててね。一花さん場所わからないだろうから一緒に……」


西原さんが、すごく優しい。
可愛い笑顔がまっすぐ私に向けられていて、だけど言葉の途中で驚いた表情に変わった。



「一花さん?!  な、なんで泣いてんの?!」

「ずびばぜん……」



西原さんは、凄くいい人なのに。
さっきは、嫉妬したりしてすみません。


あんまり西原さんが邪気なく優しくて、その分自分がすごく悪いことを言った気がして、申し訳なくて涙が零れた。



「なんで? 何かあった?」



なんで?
私だってわからない。


あんなに一途に想われていることが、西原さんが羨ましかったのかもしれない。


私には京介くんがいるのに人を羨ましがるなんて、とまたひとつ自己嫌悪の種が落ちる。
だけど何か、根本的に何かが違う気がした。


私が京介くんを好きだと思う気持ちと、東屋さんが彼女を思う気持ちとは、同じ好意の筈なのにまるで違う。


重み?
深さ?
わからない。

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