ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
『婚約に隠された悲しいヒミツ』
朝六時前。既に起床し、洗濯機を回し朝食やお弁当の準備に取り掛かる。

謙信くんに気持ちを伝えてから早一週間。

先週から自分の分に加えて、彼の分のお弁当も作るようになっていた。

鼻歌を口ずさみながらふたつのお弁当箱に、おかずを詰め込んでいく。

ずっと夢だった。謙信くんのお弁当を作ることが。


彼に気持ちを伝えてから、もっと自分に素直になろうと決めた。謙信くんに好きになってもらうには、まずは自分が素直にならないことにはだめだと思ったから。

初めて作った日はドキドキだったけれど、毎日残さず『美味しかったよ』と食べてくれることが嬉しくて、勇気を出してよかったと心から思う。



「うわぁ、今日のすみれちゃんのお弁当も美味しそう」

「ありがとうございます」

この日の昼休み。沙穂さんとやって来たのは会社屋上。部長は今日から一週間出張で不在のため、たまには外で食べようとなり屋上へやって来た。

「沙穂さんのお弁当も美味しそう」

「えぇ~そんなやめてよ。すみれちゃんに比べたらまだまだだから」
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