マドンナリリーの花言葉

「……あんなことがあって、領内の貴族はお前のことを腫れ物のように扱っている。才能も実行力もあるんだ。お前が軽んじられるのは気に入らない。お前の相手にはちゃんとした家柄の令嬢をと思って、縁談の話を持ち掛けてもいるが、難色を示す家がほとんどだ。それもすべてあの事件のせいじゃないか」


フリードの瞳は真剣で、ディルクは魅入られたように動けなくなる。


「結婚も別に望んでいません。……私が従者であることに不満でも?」

「そんなわけあるか。だが、俺の側近という意味では別に従者である必要はないだろう? 男爵になってからでもこの屋敷で俺の補佐をしてほしいって気持ちに変わりはないんだ。ただ、お前に正当な権利を戻したい」

「フリード様」


ディルクは口元を押さえて考え込んだ。

パウラ夫人の話は、フリードには言っていない。成果があがれば話そうと思ってはいたが、現時点では何の進展もなかったからだ。だが、フリードがここまで考えてくれているのであれば相談するのが正しいのかもしれない。

黙りこくったディルクが怒っていると思ったのか、フリードはポンと肩を叩いた。


「俺は、お前を頼りにしてるし、脇を任せるのはお前以外に考えていない。だが、お前の翼をもいだのは間違いなく俺の親族だ。返せるものなら返したい……そう思うのくらい、許してくれないか」


ディルクは黙ったまま、長年付き添った主人を見つめる。

幼少期から一緒に学び育ったフリード。二歳年下の彼は、手のかかる弟のような存在で、心配するのはいつもディルクのほうの役目だったのに。


「あなたに心配されるとは心外です」


< 65 / 255 >

この作品をシェア

pagetop