会長代行、貴方の心を全部わたしにください
episode 7ー守っているつもりが……
姉と言う立場は、由樹への想いの邪魔をする。

由樹が笑顔でいてくれればいい。

そう思う心の隅で、由樹の側にいるのは私でありたいと、いつも思う。

由樹が出版社編集部で働いていた頃、社内の同僚のことや仕事のことを話すのを楽しみにしていた。

由樹が小説を書いていることを知った時は、何を書いているのかが気になったし、小説が仕上がるのを今か今かと待っていた。

自室に鍵のない由樹の部屋は出入り自由だし、当たり前のように掃除をしたり、洗濯物を置きに行ったりする。

由樹は私の出入りを拒まない。

由樹は小説を公にするつもりはないと言っていたけれど、せっかく仕上げた小説を埋もれさせるのは惜しいと思い、由樹に黙って小説新人賞の公募に投稿した。

由樹は私が小説を黙って投稿したことも咎めなかったし、投稿したことさえも覚えていない風だった。
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