やられた。

誰もいない薄暗いオフィスで深い息を吐く。


朝から天気予報は近付く台風のせいで一日中雨。

お昼ご飯を食べた後からは風も強くなりオフィスの窓ガラスに叩きつけるように降り出した。


「岩崎さん、これお願いね」


主任の佐田さんから渡されたメモには幾つかの取引先名と沢山の日付。古いものは5.6年前のものもある。



「資料室にある納品書の綴りからそれだけ探してきて。今日中にお願い」


「はい」


返事はするものの、心の中で盛大に溜息をつく。


本当にこんなものが必要なんですか?


喉元までせり上がる言葉をコクリとのみこむ。

どうせいつもの嫌がらせなんて百も承知だ。

30を少し過ぎた、いつも一部の隙もないオフィスファッションと完璧なメイクの、自らの美しさに自信たっぷりのこの主任はわたしのことが嫌いらしい。



入社3年目、大阪に本社がある大手機械メーカーの営業一課がわたしの勤務先。


どうやら代々一課には精鋭が集められるらしく、将来有望な男性が多い。

わたしはその中で補佐として事務を担当する女子社員の1人。