愛すべき、藤井。

藤井しか見てないよ


***

《夏乃side》



昨日は眠れなかった。


あれから、

上着も着ないで会いに来てくれた藤井は、私を抱きしめる力を緩めて『送ってく』とか言い出して。


藤井の体温と、藤井の匂いを恋しく思いながらも悟られないように頷いて離れた。


歩く度に肩が触れる距離で歩いて、触れる度に藤井に抱きしめられてた部分が熱をもって疼いた。



昨日の藤井は優しすぎて、


勘違いしそうになった。



ううん、言っちゃえば藤井は多分ずっと優しかったんだけど。私がどんな理不尽なことで怒っても、どんな理不尽なことで当たっても、どんな理不尽なことで貶しても、


『ったく、お前なぁ!』って言いながら、いつも最後は藤井が謝ってくれたし。



私はいつも、それに甘えてばかりだった。



2週間、たった2週間だよ?


藤井と朝夕一緒に帰らないだけで、
普段より学校で話さなかっただけで、


こんなにも久しぶりの藤井に満たされるとは思ってなかった。



家まで送ってくれた藤井の『明日、ちゃんと準備終わらせて待ってろよ』って言葉に、不覚にとキュンとさせられて


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