愛すべき、藤井。

愛すべき、藤井。



***


昨日、凍える両手を擦り合わせて温めながら家に着いたのは、もう21時半を少し過ぎた頃だった。


11月の夜風はそりゃもう驚くほどに冷たくて、家に着いた時には私の体はすっかり冷え切っていた。




───ピピピ、ピピピ



そして、朝。



「38.4度」

「うげぇ……」

「全く、あんたって子はバカなんだから。人の看病してる場合じゃないわよ!今日は大人しく寝てなさい」



……朝方から寒気に襲われて、薄々そんな気はしていたけれど。



不思議なもので、人間というのは熱があると知る前はケロッとしていても、知ってしまうと具合が悪い気がしてくる生き物だ。


一括りに人間と言うのは良くないか。


……私はそう言う生き物だ。



「お父さん見送ったら、ママも仕事に出るけど大丈夫?ダメそうなら電話くれたら早退してくるから」

「だいじょーぶ。寝てたら良くなるから」

「ほんと?何かあったらすぐ」

「分かってる!大丈夫だから」



適度に過保護な、だけど束縛なんかは一切しない、『好きなようにやりなさい』が口癖の、のんびり両親に育てられた私は、


両親の友人に会うと必ず『血を濃くひいてるね』と言われる。

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