愛すべき、藤井。





言おう。

言ってしまおう。

スキでいるだけじゃきっと、いつか欲張りな私は足りなくなってしまうだろうから。伝えられる距離にいる、今をやっぱり無駄にはしたくない。



───ドッドッドッ


心臓の音がやけにうるさい。
もうどこが心臓なのか分からないくらい、全身が脈打ってドクドクしている、そんな感覚。


「おい?いきなりぼーっとして、どした?」

「藤井……」

「あ?あ、分かった熱中症だ!」

「ねぇ、藤井ってば!」


ドキドキしすぎて、息がうまく吸えないのに。相変わらず藤井はバカ丸出しで。


仮に熱中症だとしても、私がこんなに熱を持ってるのは太陽さんのせいじゃなくって、間違いなくお前のせいだよ藤井。


「ん?」


小首傾げるその仕草、似合ってなさすぎだよ藤井。だけどそれもまた、私に言わせりゃギャップ萌え。


好きなんだよ。


藤井のこと。


「すごい好きだよ、藤井」

「……え、誰が?は?え、夏乃(なつの)が?誰を?俺?……は?」



サラッと名前呼びな辺り、普通にときめくからやめてよね。あと『は?』とか結構、こっちは不安になるからやめてよね。


あーほんと、腹立つくらい鈍いよ、藤井。



「藤井、チャック開いてるよ」

「……あ、まじだ」


だけど、こんなに好きだから。
簡単には諦めてあげない。


覚悟しててよね。


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