奏でるものは 〜功介〜
第5章
12月になって急に寒くなった。

唯歌を学校の帰りに駅まで送っていた12月半ばの金曜日。


「あのね、クリスマスもお正月も、家の用事で、会えないの」

少し言いにくそうな唯歌の声がした。

「……そう、なのか?」

約束していたわけではないが、会えるだろうと思っていた俺は、少し戸惑った声になっていただろう。

「ごめんね。

明日ね、だいぶ早いけど、クリスマスみたいに二人で遊べないかなぁ?」

クリスマスみたいに………唯歌も会えると思っていたのか、とホッとした。

「いいよ。どこか行きたいところある?」

「う…ん」

「どこ行きたい?」

どこか行きたいところが、あるんだろう。

俺は、どこでも良かった。

唯歌の行きたいところなら。

「え。どこでもいい。けど……

知ってる人に会わないとこに行きたい」


どこか、知ってる人に会わない場所。

「ちょっと、すぐには思い浮かばない。

また連絡するから」



「分かった。でも、無理ならいいの……」



駅で、手を振って別れてからも、考えた。





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