わたしが小説を書くように
出会い
 入学して、履修登録をして、……煩雑な事務手続きをするわたしの手は、震えっぱなしだった。

 遠回りはしたけれど、ようやく、先生の講義を受けられる。

 十数年越しの恋なのだから、この震えも当たり前なのかもしれない。

 
 初めての講義の日、大教室は満席で、わたしはしぶしぶ後ろのほうの席に座った。

 この日のために、何日も前から書き溜めてきた原稿を、大事に持って。


 これが、わたしのたったひとつのプライドだった。

 作家として箸にも棒にもかからないというわけではないところを、見せたかった。


 授業開始を告げるチャイム。
 先生が入室してきた。

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